特別措置法って何?押さえておきたいb型肝炎の基礎知識

特別措置法って何?押さえておきたいb型肝炎の基礎知識

b型肝炎は世界中で約20億人の感染者がいると推定され、日本にも多くの患者が存在する病気です。日本においてもb型肝炎は大きな社会問題となった歴史があり、2012年にはb型肝炎患者を救済するための法律(特別措置法)が制定されました。

この記事では、b型肝炎について押さえておきたい基礎知識と、特別措置法の意義について解説します。

b型肝炎ってどんな病気?

b型肝炎は、b型肝炎ウイルス(HBV)を病原体とする肝臓の病気です。急性b型肝炎に感染すると、約90日後に症状が出始め、倦怠感や疲労感、食欲減退、吐き気などを催すようになります。これらの症状は、悪化すると命の危険にもつながりうるので、発覚したらすぐに入院と安静治療をする必要があります。

一方、慢性b型肝炎の場合はこれらの症状は現れません。しかし、HBVに感染していることには変わりないので、将来的な肝硬変や肝臓がんなどのリスクは高まります。多くの慢性患者は自分がb型肝炎に感染していることを知らずに過ごしており、中には自分が患者であることに気づかないまま一生を終える人もいます。

世界規模で見ると、約20億人がb型肝炎に感染した経験を持っています。日本の感染者の割合は比較的少ないですが、アジアやアフリカの一部地域では感染者が人口の8%を占める地域もあり、ウイルス蔓延の度合いには地域差があることがうかがえます。

b型肝炎の危険なところは、重い病気につながりうるだけでなく、自分でも気づかないうちに他人にウイルスを移してしまう可能性があることです。とくに、感染者の多い地域では、日常的な接触で知らず知らずのうちにウイルスが蔓延していると予想されます。

感染経路と予防法

b型肝炎の感染経路には、集団予防接種などによる血液感染と、性交渉などによる感染の2通りがあります。血液感染の場合は、HBVを持った人の血液が注射針などを通じて体内に入ることでウイルスが拡散します。これを防ぐためには、注射針や歯ブラシ、カミソリといった、血液の付着する可能性があるものを使い回さないようにすることが重要です。

性交渉による感染は、コンドームの着用によって防げる確率が上がります。また、パートナーからHBVが感染した場合、別の人との性交渉でウイルスを移してしまう可能性があるので、必ずパートナーと一緒に検査を受けておき、お互いに感染していないかを確認しておきましょう。

また、HBVウイルスの蔓延している地域へ旅行や出張で行く場合には、必ず事前に予防接種を受けておくようにしましょう。感染者が多い地域では、母子感染によって家族全体がHBVウイルスを持っているというケースもよく見られます。

地域ごとに気をつけるべきことも変わってくるので、情報収集が大事です。

関連:b型肝炎、パートナーの感染が判明した場合

b型肝炎と日本社会

日本社会においても、b型肝炎が大きな社会問題となってきた歴史があります。HBVの拡散は1950年代から世界で問題になっており、注射針の使い回しによる感染の防止についてはWHOが各国に対策を求めていました。

日本政府もHBVの危険性は認識しており、各自治体に注意喚起をしていましたが、これが徹底されていなかったため、集団予防接種における注射針の複数回使用によって各地でb型肝炎が蔓延することになります。1950年代後半から1980年代までの約30年にわたってこうした状況は放置され、b型肝炎患者は増加の一途をたどりました。

司法の場に初めてb型肝炎の問題が持ち込まれたのは、1989年の札幌地裁での訴訟です。

この訴訟では、注射針の連続使用によってHBVが拡散されたことは国に責任があるとして、謝罪や補償を求めて5人の患者が国を訴えました。この頃からb型肝炎が社会問題化し、注目が集まります。結局、最高裁が国の責任を認める判決を出したことにより、原告勝訴でこの裁判は幕を閉じました。

しかし、国は原告へ賠償金を支払ったものの、原告以外の患者に対しては救済措置を取る姿勢を見せませんでした。2008年、こうした態度に怒った患者が各地で訴訟を起こし、b型肝炎は再び司法の場に持ち込まれます。

そして2011年には札幌地裁が出した和解案にもとづいて国と原告団の和解が成立し、患者救済のための基本合意が結ばれました。この合意では、b型肝炎の拡大について国が責任を認めて謝罪すること、認定患者に対して給付金を支払うこと、HBVの集団感染について再発防止のための真相究明を進めること、b型肝炎患者への差別と偏見をなくすための啓発活動に取り組むことなどが約束されています。

特別措置法の意義と課題

2012年に施行された特別措置法は、前年の基本合意にもとづいて患者への給付金の支払い手続きを定めたものです。

この制度のもとでは、集団予防接種によるb型肝炎への感染が証明された患者に対して、簡素な裁判手続きを通じて給付金が支払われることになります。注意すべき点は、患者自らが手続きを開始しなければならないことです。

特別措置法の対象者であっても、裁判手続きを踏まなければ給付金が支払われることはありません。特別措置法は、HBVの危険性を認識しながら拡散を防げなかったことに関して国が責任を認め、公的なかたちで患者を救済していることに意義があります。

一方で、この制度が適用されるのは施行から10年後の2022年までと定められており、すべての患者の救済が実現するかどうかには疑問もあります。

事実、特別措置法の対象になる患者の数は全国に約45万人と推定されていますが、実際に裁判手続きを踏んで給付金を得ている患者は約1万5000人と、まだまだ救済されていない患者が圧倒的に多いです。

すべての患者を法的に救済するために制度を周知し、積極的に救済を進めていくことが特別措置法の課題といえるでしょう。

関連:b型肝炎治療中や無症候性キャリアでも生命保険に入れるのか

b型肝炎のこれから

慢性のb型肝炎の治療方法は現在開発中ですが、b型肝炎を完治させる治療法は残念ながらまだ開発されていません。しかし、b型肝炎の症状を和らげるための治療法や、新たな肝臓の病気が発生するリスクを軽減する療法は徐々に確立されてきているので、いずれはb型肝炎を完治させる技術ができる可能性もあります。

b型肝炎は危険な病気ですが、日常的な接触では感染しない分、きちんと対策すれば予防は可能です。自分や周囲の人がb型肝炎にかかってしまった際も、あせらず落ち着いて対処できるようにしましょう。

参考元『b型肝炎補助金』|http://www.adire-bkan.jp/